交通事故に遭われた患者さんの中で、高い確率で後遺症が発生するものに「むち打ち症」(頚部捻挫)があります。「むち打ち症」は事故での外力の大小により、後遺症の発症時期や程度が大きく異なります。
事故当初は患者さん自身も「気が張っている」状態で症状が表に出にくいのです。受傷直後の検査で異状が認められない場合でも、数日経過して頭痛や吐き気とともに、むち打ち症特有の自覚症状(だるさ、痛み、しびれ、違和感)が、首・背中・上腕部・腰・膝・下腿部など広範囲に認められます。
通常は事故後、病院で自覚症状のある患部が特定され、レントゲン・MRIなどの画像検査が行われます。その多くは、「骨に異常なし」、つまり骨折していないので、シップと痛み止めの薬を処方され、軟部組織(筋肉)の治療をせずにそのまま帰されてしまいます。そして、時間の経過(患者さんの気が緩む)とともに、徐々に現れる、頭痛、めまい、吐き気・・・。首から指先までのしびれ感、腰や大腿部・下腿部の重だるさなど、体全体のいたるところに様々な症状が出てきます。これらの症状は事故後1週間〜1ヶ月くらいに出る場合が多く、これが当院にいらっしゃる交通事故に遭われた患者さんの一番多い例です。
静止画像(レントゲン・MRI)では異常が無くても、関節の動きを検査すると、異状が診られる事が多々あります。その場合は放置せずに、しっかり治療(筋肉と関節の両方)を受けることによって、大きな後遺症を防ぐことができるのです。
たとえ受傷初期で、症状が軽くても、適切な治療を受けることをお勧めします。